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自然との共生を意識した防災対策。津波から命を守る森づくり。

関東大震災から100年

地球物理学者 寺田寅彦博士/1878年(明治11年)〜1935年(昭和10年)

  • 東京生まれ高知育ち(3〜18歳)
  • 父は高知県の士族出身
  • 東京帝国大学理科大学卒業
  • 東京帝国大学教授(物理学)
  • 地震研究所にも籍をおいた
  • 随筆家としても活躍

「天災は忘れた頃にやってくる。」これは、自らも関東大震災を東京で経験した地球物理学者 寺田寅彦博士が残した有名な警句です。100年前の1923年(大正12年)、マグニチュード7.9と推定される巨大地震が日本の関東地方を襲い、死者・行方不明者10万5千人という未曾有の被害をもたらしました。関東がこれほどの大地震に襲われたのは、1855年(安政2年)7千人以上が亡くなったとされる安政の大地震以来70年近くが経っており、まさに「忘れた頃」にやってきたということです。

本所被服廠(ひふくしょう)近くの本所安田邸

関東大震災直後の本所安田邸の様子(現在の墨田区横網)/写真提供:国立科学博物館所蔵

100年前の声を聞こう!

近代文明の進展が国の安全を脅かす!?
自然との共生を意識した防災を考える。

寺田博士は著名な随筆家でもあり、多くの随筆を残しています。関東大震災から11年後に発表した『天災と国防』では、科学的視点から天災を考察するとともに、社会や文化の影響も考慮し、近代文明の進展が国の安全を脅かす可能性を指摘しています。自然との共生を意識した、天災への対処方法を再考するきっかけを提供する随筆でした。その一部を要約してご紹介します。

日本は、気象学的、地球物理学的にも非常に特殊な場所にあり世界的にみても災害大国といえます。
昔々、人類がまだ原始的な時代は、頑丈な岩山の洞窟に住んでいて、地震や暴風に対して比較的安全でした。文化が進み、小屋を建てるようになっても、テントや掘立小屋であれば、地震に対しては却って安全であり、風に飛ばされても修復が容易だったと考えます。
人々は自分の努力で食べ物や服、家を手に入れていましたので、天災による損害は最終的には個人の損害であり、回復も各自の努力が必要でした。この時代、人は自然に対して従順で、無理に自然に逆らうようなことはしなかった。それが良かったのだと思います。

文明が進むと、人々が集まって社会を作り、色々な職業が生まれました。人は自然をコントロールしようとし、風圧水力に抗するような造営物を作りました。電気や水を運ぶための電線やパイプがあちこちに張り巡らされ、交通網が広がりました。これらは、1箇所に故障が起こればその影響はたちまち全体に波及する危険が潜んでいます。もちろん、送電線にしても強風などに耐えられるように綿密な設計がされていますが、突然の天災には堪えられないのは当然のことだろうと寺田博士は警鐘を鳴らしています。

大事なことは、教訓を知って備えること。

大事なことは、文明が進むにつれて、天災の被害も増える傾向があることを自覚し、防災対策を講じる必要があるということです。しかし、天災がまれにしか発生しないため、人々は前の災害を忘れてしまい、同じような災害に再び巻き込まれる傾向があるということです。
小学校でも防災教育を組み込むなどの忘れない努力と、防火訓練も大事であるが、5、6大都市を一薙ぎ(ひとなぎ)にするかもしれない未来の全日本的地震に対する防災訓練をやってはどうだろうか、と寺田博士は書いています。

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自然との共生を意識した、防災の森づくり。

鎮守の森のプロジェクトで進める「災害からいのちを守る森づくり」は、自然との共生を意識した防災への取り組みです。自然環境の機能を活用し、森の盾により津波被害を減災します。
今年は、関東大震災発生からちょうど100年の節目を迎えました。その発生日である9月1日は後に「防災の日」として定められ、災害に備えるための活動や訓練が行われています。国や自治体、たくさんの団体が防災の大切さを伝える活動をしています。
当財団でも、防災の意識を高めるため、南相馬市で植樹活動を行いました。当日は、多くの植樹ボランティアの皆さまにお集まりいただき、地元の方々をはじめ、遠くは香川県、北海道、秋田県、大阪府、愛知県、首都圏などから参加いただきました。

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自然との共生を意識した火災対策、都市部編

Q 問題です。
関東大震災では、市民が逃げ込んだ避難場所の周囲を囲む素材の違いが生死を分けたという調査報告がありました。その素材の違いとはなんでしょうか? 答えはこちら。☆都会や木造住宅密集地で生活する方は必見です!

寺田寅彦博士記念館

寺田寅彦記念館(寺田寅彦邸跡と居室)は、高知県小津町4-5にあります。同県出身の植物学者 牧野富太郎博士の文字が刻まれた石板が入口でお出迎えしてくれ、寺田博士の随筆や新聞、様々な資料が揃っています。ぜひお立ち寄りください。
高知県ホームページ
https://www.city.kochi.kochi.jp/site/kanko/teradatorahiko.html
寺田寅彦記念館 友の会
https://tera-tora-tomo.sakura.ne.jp/

本文引用・協力:寺田寅彦随筆集『地震雑感・津波と人間』発行 中央公論新社/寺田寅彦記念館 友の会資料より

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