鎮守の森のプロジェクトで行う植樹は、林業家など技術者の手による植樹ではありません。地元住民や活動に賛同し、全国から集まってくれる一般ボランティアの手で木が植えられています。にもかかわらず、植樹後の苗の活着率(根付き率)は90%を超えています。その秘密はどこにあるのか。ポット苗育苗講習会ではその秘密を丁寧に紐解いています。
活着率90%の秘密は大きく4つあります。
秘密1)植樹ボランティアの丁寧な作業
植樹祭の当日が雨でも、風が強くても、猛暑でも、寒くても、参加者の皆様は最後まできっちりと丁寧に作業してくださります。
秘密2)学術的な指導で育てた苗木
厳しい自然に耐え抜くために、私たちは苗木のクオリティに目標となる基準を設けて育てています。苗木は「根」が命。
秘密3)健やかな成長を促す植栽マウンド
植栽の前に土を耕転させ「ほっこら」とフカフカな状態にし、空気層を設けることで根の成長を促します。また、かまぼこ型に盛土をし傾斜をつけることで水はけが良くなり、根腐れを起こしにくいのです。
秘密4)十数種類の郷土樹種を混植・密植
宮脇昭名誉教授が長年の実績と植生調査により導き出した独自の方法で植樹します。ポット苗(樹高30〜50cm)の植樹は、樹木のもつ耐性・適応能力を最大限活かします。
2018年12月1日(土)千葉県君津市にて開催したポット苗育苗講習会では、
午前中に座学を行い、宮脇昭先生の弟子にあたる、東京農業大学教授で植物学者の鈴木伸一先生から、森の地産地消・郷土樹種を使った植樹についてや、「潜在自然植生理論」を講義していただきました。また、同じく農大の当財団技術部会員 西野先生からは実際に被災地調査を行い、その事実をもとに考える防災のための植栽について学びました。
午後は圃場に移動し、活着率90パーセントの秘密のひとつである「学術的な指導で育てる苗木づくり」を体験しました。良い苗だけでなく、悪い苗を作る方法も学ぶことで一目瞭然の比較結果を見ることができました。厳しい環境を耐え抜く苗木に最も重要なポイントは「根」にあります。良い「根」へと育てるために欠かせないものを学びました。
ポイント1)土づくり
良い土壌とは、土(個体)4割・水分3割・空気3割と割合が明確です。この割合のものが、水はけが良く保水性と保肥性に優れ、植物の根は発根し、生育が旺盛となります。土壌は、赤土・鹿沼土などなど、粒子の異なる(質、大きさ)個体を配合してつくります。
ポイント2)鉢上げ(稚苗のポットへの移植)
本葉が2〜4葉になったら鉢上げします。稚苗の根を直射日光に当てない(20秒ほどで細根のほとんどが枯死する)。深植えしない。土はふんわりと入れ空隙を保つようにし、トントンしない。仕上げの水やりは底穴から水が出てくるまで充分する。
苗木の管理ポイント
1)管理場所
ポットは、大地から離した棚に置く。
2)水やり
充分な水やりと適度な乾燥を繰り返すことで活発な発根を促します。タイミングは朝夕どちらかで、あげすぎ注意。
3)除草
病害虫発生の原因にもなりうるので、ポット容器内に雑草が発生したら早めに取り除きます。
4)肥料
稚苗は、人間の赤ちゃんと同じく、栄養をあげすぎると消化しきれずに下痢を起こします。生長と共に徐々に肥料を施します。
鎮守の森のプロジェクトでは、植樹する苗木に7項目の検査基準を設け、点検の上、基準をクリアした苗木を基本に植樹しています。
是非、鎮守の森のプロジェクトの「活着率90%の秘密を紐解く」講習会へご参加ください。