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国際シンポジウム報告書: 宮脇の森と都市林再生


2024年10月10日から14日まで、横浜国立大学(YNU)において「宮脇の森と都市林再生」に関する国際シンポジウムが開催されました。シンポジウムでは、宮脇の森が都市および環境課題に対応するための多様な可能性が紹介されました。

参加者総数: 149名(海外27カ国から87名、日本から62名)

  • 事務局長:新川眞 (鎮守の森のプロジェクト事務長)
  • 実行委員会メンバー:藤原一繪、Elgene O. Box、Grey Coupland、佐野輝子、浦田未央、鈴木伸一、水田和宏
  • 主催者:ムラレー・トゥマルクディ国連 G20グローバル・ランド・イニシアティブ ディレクター国連砂漠化防止対処条約
  • 主催者:鎮守の森のプロジェクト

Angelina Lee’s Photos

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ムラレー・トゥマルクディ氏からの挨拶

G20グローバル・ランド・イニシアティブ(GLI)のディレクターであるムラリー・トゥンマルクディ氏は、急速な都市化が進む中で、子どもたちが自然と再びつながる重要性を強調しました。GLIは「ネイチャー・ラボ」プロジェクトを通じて、宮脇の森を利用して学校を「生きた実験室」に変え、持続可能な環境教育を提供することを目指しています。

基調講演: 藤原一繪教授

藤原教授は、災害に強く多様性を支えるために、在来種の密植とマルチングを活用する宮脇の森の歴史と成果について紹介しました。世界で約2,900の成功プロジェクトがあり、その有効性が実証されていますが、大規模な導入にはさらなる革新と協力が必要とされています。

基調講演: Elgene O. Box教授

ボックス教授は、在来種を密植して短期間で安定した森林を形成する科学的根拠について説明しました。この方法は元々日本の気候に適したもので、現在は世界各地に適用されていますが、新しい地域で効果的に実施するには現地の専門知識と適応が求められます。

宮脇昭博士が、植樹祭で愛用していた麦わら帽子と長靴。/Angelina Lee’s Photos

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発表ハイライト

  • ベルギーの都市再生: 宮脇の森の成長と生態学的影響に関する研究が、都市地域での土壌の保湿と温度低下に有効であることを示しました。
  • ケニアの環境再生: ナイロビ大学などが宮脇の森手法を用いて森林再生を行い、土壌浄化と生物多様性の保全に効果があることが示されました。
  • 日本の商業施設の緑化: イオンの「ふるさとの森」プロジェクトでは、ショッピングセンター周辺の宮脇の森が炭素固定や鳥の生息地に与える利点が評価されました。
  • タイの環境教育: 学校での宮脇の森が生態学習の場となり、生物多様性やミツバチの生態に焦点を当てた教育活動が行われ、生徒の環境意識が高まりました。
  • 中東での社会再生: レバノンでは都市部に宮脇の森を導入し、災害後の癒しと社会再生のためのコミュニティスペースとして機能しました。
  • インドの生態系回復: インドでは、地元の生態系や気候に適した植生を選定し、都市の緑地再生の可能性を探りました。
  • 南相馬市の森の防潮堤: 東日本大震災後、宮脇の森手法が採用され、森の防潮堤が整備されました。2013年以降、震災ガレキで作られた盛り土に市民が21万4千本以上の苗木を植え、地域の長期的な保護を図る強靭な緑地が創出されています。

これらの発表は、宮脇の森が都市と郊外の環境保全および生態系の回復に果たす重要な役割を強調しました。

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シンポジウムのプログラム概要

シンポジウムには、基調講演、パネルディスカッション、インタラクティブセッションが含まれ、以下のテーマが取り上げられました。

  • 宮脇の森の科学的基礎: 宮脇の森の生態的利点、生物多様性の回復、持続可能性についての科学的議論が行われました。エルジーン・ボックス教授と藤原一繪教授による科学的基礎の説明がありました。
  • 宮脇の森プロジェクトの計画と実施: 都市や教育機関向けのガイダンスが提供され、「計画と実施」などのワークショップやアンガサナ・ブーニヨバス氏とシュブエンドゥ・シャルマ氏による実践的なインサイトが共有されました。
  • ネイチャー・ラボの資金調達: 学校を拠点とした宮脇プロジェクトの革新的な資金調達戦略について、ニラム・パティル氏とエドウィナ・ロビンソン氏によるプレゼンテーションがありました。

福島県南相馬市 門馬市長もパネルディスカッションに参加しました。/Angelina Lee’s Photos

岩沼市の森の防潮堤について発表いたしました。鎮守の森のプロジェクト・技術部会長・鈴木伸一博士(国際生態学センター長)/Angelina Lee’s Photos

国際シンポジウム参加者の内訳
参加者総数: 149名(海外27カ国から87名、日本から62名)

参加者概要

  • 海外発表者: 38名
  • 海外参加者: 49名
  • 日本発表者: 16名
  • 日本参加者: 46名

国別参加者数

  • アメリカ: 6名
  • オーストラリア: 10名
  • ベルギー: 1名
  • イギリス: 4名
  • ブルガリア: 1名
  • カナダ: 4名
  • チリ: 2名
  • 中国: 1名
  • オランダ: 1名
  • エストニア: 1名
  • フランス: 2名
  • ドイツ: 1名
  • ギリシャ: 1名
  • インド: 8名
  • インドネシア: 1名
  • イラク: 1名
  • イタリア: 6名
  • 日本: 62名
  • ヨルダン: 2名
  • ケニア: 1名
  • レバノン: 1名
  • マケドニア: 1名
  • メキシコ: 1名
  • ネパール: 1名
  • 南アフリカ: 1名
  • 台湾: 2名
  • タイ: 19名
  • 未定(当日参加者):7名

オプショナルイベント参加

シンポジウムの参加者は、実践的なオプショナルイベントにも参加し、宮脇の森による生態系回復の価値を体験学習しました。

  • 10月12日: 苗木づくりワークショップ – 57名 報告レポート
  • 10月13日: 植樹祭および葉山小学校訪問 – 60名
  • 10月14日: 城山熊野神社での植樹祭 – 44名

これらのイベントは、宮脇の森手法の生態系回復における重要性についての理解を深める貴重な体験となりました。

レポート:事務局 佐野輝子

YouTube/Day 1 of the International Symposium: Miyawaki Forests and Urban Forests

YouTube/Day 2 of the International Symposium: Miyawaki Forests and Urban Forests

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国連G20グローバル・ランド・イニシアティブ ディレクター 国連砂漠化対処条約による横浜宣言

最後に、横浜宣言は、宮脇の森のグローバルな普及とその持続可能な実施を推進し、地球規模の環境課題の解決に貢献することを目指し、持続可能な未来を築くための重要な国際的宣言であることをご報告いたします。
この横浜宣言を受けて、鎮守の森のプロジェクト(MORINO PROJECT)は、宮脇の森のグローバルな普及と持続可能な実施に向けた取り組みをさらに強化し、国際的な環境課題の解決に貢献することを目指します。

以下、横浜宣言和訳

横浜宣言:宮脇の森

私たちは、国連砂漠化対処条約G20グローバルランドイニシアティブおよび森のプロジェクトの共催で開催された第1回宮脇の森国際シンポジウムに参加する宮脇の森の実践者および愛好家として、ここ日本の横浜に集いました。
気候変動、急速な生物多様性の喪失、土地の劣化、急速な都市化、子どもや都市住民が自然から切り離され、自然界とのつながりが失われつつあるという差し迫った世界的な課題を認識し、
生物多様性の向上、気候変動の緩和、その影響への適応、劣化した土地の回復、および人々の福祉に欠かせない貴重な生態系サービスを提供する能力を持つ宮脇の森の大きな可能性を認識し、
宮脇昭教授の先駆的な森の再生手法から着想を得て、ここに以下を宣言いたします。

宮脇の森は、世界的な重要解決策である
宮脇の森は、地球が直面する相互に関連する課題に対処し、次世代に持続可能な未来を築くための強力なツールを提供する世界的な解決策です。

世界宮脇の森実践者ネットワークの構築
私たちは、世界中の専門家が協力し、知識を共有し、推進活動を行うためのプラットフォームとして、世界宮脇の森実践者ネットワークを設立します。このネットワークは、宮脇の森の分野を進展させ、世界規模での導入を促進し、政策とガイドラインの策定に貢献します。定期的な会合や会議を開催し、コミュニティ形成、ベストプラクティスの交換、宮脇の森に関する知識の普及を図ります。また、小さな森ネットワーク、国連生態系回復の10年、社会生態学会など、同様の使命を持つ団体と協力していきます。

宮脇教授への敬意
私たちは、宮脇教授の遺産を称え、その先見性あふれる業績が次世代を引き続き鼓舞し導くよう、宮脇メソッドの研究と普及に向けた取り組みを推進するよう、政府、大学、その他の機関に働きかけます。この取り組みには、宮脇の森を研究し、宮脇メソッドを教えるための研究ユニットの設立、大学における宮脇教授のチェア設立、宮脇の森研究を支援するための奨学金や資金提供が含まれる可能性があります。

世界的な実践者の表彰
宮脇の森の発展と実施に貢献した個人、団体、地域社会を表彰するための年次表彰制度を設けます。この表彰は、この分野でのさらなる行動と革新を促し、奨励するものとなります。

アプローチの標準化
地域や生物気候に応じたガイドラインやフレームワークを策定し、異なる生態系環境において宮脇の森が最大限の効果を発揮するように努めます。また、宮脇の森に関するガイド、ビデオ、文献をさまざまな言語に翻訳し、他の関心のある言語でも利用できるようにします。他の機関とも連携し、宮脇メソッドの実践者に向けた認証制度を確立するための取り組みも行います。

教育と能力開発
政策立案者、地域社会、個人を対象に宮脇の森の利点を伝え、専門家が宮脇の森の植樹を実施できるように能力を育成する取り組みを強化します。これにより、地域社会と次世代が自らの地域環境の保護者としての役割を果たし、地球全体の回復に貢献するよう促します。オンラインおよび対面での宮脇メソッドのコースも開発し、受講者がこのトピックに関する認定と単位を取得できるようにします。

風景への統合
地方自治体、市長、企業、地域社会と連携し、都市の土地再生や公園の整備に宮脇の森を導入します。これらの森を都市の風景に組み込むことで、人々と自然とのつながりを深め、より健康的な生活環境を創出します。

学校や大学での自然実験室の設立
世界中の学校や大学と協力して、キャンパス内に宮脇の森を設け、教育の場、アウトドア教室、学生の憩いの場として活用します。このような自然実験室の創設に学生が関わることで、人間と自然のつながりを物理的・精神的に理解する新たな世代を育成します。

宮脇の森の世界的拡大の促進
既存の宮脇の森の位置、規模、樹種構成、生態的な成果を記録した世界的なデータベースを備えた包括的なオンラインプラットフォームを設立します。このプラットフォームには、各地域の潜在自然植生データベースや、宮脇の森の植樹と普及活動を行う専門家や機関のディレクトリも含まれます。また、プロジェクト提案者と資金提供機関を結びつけるハブとしての役割も果たし、知識共有や連携、成功した宮脇の森の取り組みを世界中で再現できるようにします。

最後に、私たちは、宮脇の森を私たちの時代が直面する緊急の課題への持続可能で効果的な解決策として広く普及させ、その実施を推進するため、協力して取り組んでいくことを約束します。

2024年10月11日
日本・横浜

公益財団法人 鎮守(ちんじゅ)の森のプロジェクト

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