10月12日、シンポジウムの一環として苗木づくりワークショップが開催されました。このワークショップでは、宮脇メソッドを用いた森林再生プロジェクトに向け、地域の「潜在自然植生」(PNV)に基づく在来樹種の育成に重点を置きました。ガーデンセンターで市販されている植物ではなく、地域の土壌や気候に適応した在来種を用いることで、地域固有の生態系にふさわしい森林の再生を目指しています。しかし、こうした在来種は商業的に流通していないため、私たちは種を採取し、自ら苗を育てる必要があります。
なぜこの取り組みが重要なのか?
1. 生物多様性の保全
在来種はその地域の独自の生態系と調和し、外来種による生態系の破壊を防ぐ役割を担っています。
2. 自然災害や気候変動への対応
潜在自然植生に基づいた森林は、地元環境に適応し、二酸化炭素の吸収や洪水の防止に貢献するため、気候レジリエンスの向上にも寄与します。
3. 地域社会と自然とのつながりの促進
種の採取や苗木の育成に携わることで、参加者は自然への理解を深め、持続可能な未来への意識と責任感を育みます。
ワークショップの中では、良い苗と悪い苗の違いや、厳しい環境に耐え抜くポット苗を育てるための技術についても解説されました。丈夫な苗木を育てるためには「根」の発根を促し、ポット内で根が充満することが大切です。根は人間で例えると「胃袋」に相当し、大きな「胃袋」を持つことで、より多くの栄養を吸収し、丈夫に育つことが可能になります。鉢上げのポイントや土壌の選定、水やりなどの高度な技術も惜しみなく披露されました。
この実践的なワークショップは、地域社会の参加と生態系への意識の重要性を強調し、地元の生物多様性を支える持続可能な森林づくりに向けた第一歩としての役割を果たしました。参加者たちは積極的に活動し、互いに協力しながら作業を進め、質問や意見交換が行われるなど、このセッションは教育的であるだけでなく、参加者同士の絆を深め、協力の精神を育む場ともなりました。
この取り組みに参加し、支援してくださったすべての皆様に感謝申し上げます。苗木が成長し、森林再生への継続的な努力の一環として役立つ日を楽しみにしています。
レポート:事務局 佐野輝子
国際シンポジウムのレポートはこちらから